YAMAGUCHI::weblog

海水パンツとゴーグルで、巨万の富を築きました。カリブの怪物、フリーアルバイター瞳です。

機内で2冊

死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)

死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)


蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

蟹工船・党生活者 (新潮文庫)


長期出張で3ヶ月San Franciscoに行くことになって、今日が出発の日でした。向こうに行ってから暇になったときに読もうと思って買った文庫本をまさか行きの機内で読み切ってしまうとは思いませんでしたよ。
前者の乙一の作品は自分がまだ高校生の頃の作品でまだ乙一が爆発的に売れる時期よりも少し前のものですが、改めて読んでみると非常に読みやすい、かといってライトノベルにありがちな言い回しでごまかすような表現もなくきれいにまとまった作品だなと感じました。
特に主人公のマサオの内面がアオという幻覚のキャラクターに投影され、そのアオが次第にはっきりと自我を表す様の描き方が個人的には読み手に無理をさせない加速感だなと感じました。
締め方も乙一らしい余韻を残したもので、娯楽として読む読書としてちょうど良い読後感を得ました。
後者は文学史においてプロレタリア文学を語る中で欠かせない作品ですが、最近ワーキングプア派遣労働者が再び注目しだして異例の売り上げだというので、あまのじゃくな自分ではありますが読んでみました。
作品は執筆当初の文体であり、読み始めた当初は「ちょっと読みづらいかな」とも思ったのですが、台詞が多くまた内容もリアルに蟹工船を写実するかのような表現だったので、すぐに読み慣れました。
この当時の労働者の労働環境をうかがい知ると、自分がいまいかに恵まれた環境にいるかつくづく思い知らされます。
しかし話は変わって、近年の労働環境は蟹工船の雑夫、漁夫らの環境とは大きく違います。マスコミがそういった労働者をあたかも蟹工船の漁師に重ねるのは多少無理があるのではないでしょうか。うーん。。。