はじめに
公開からあちこちで話題になっていた「アバター」を観てきました。
一応大学院では3Dアニメーション作成に関する研究を行っていたのでその興味も手伝い大きな期待をもって臨んだのですが、その期待を裏切らない作品でした。
このブログでは珍しくその感想などをいくつかの視点から綴ってみたいと思います。
シナリオに関して
いきなりネガティブな内容になってしまうかもしれませんが、わかりやすい内容です。ネタバレになるのであまり書きませんが、
- 人間と自然
- 異なる文化を持つ者との共存
みたいなテーマを中心として、アクション要素てんこ盛りでした。特に嫌いというわけではありませんが、「ハリウッド物」と言ってしまえばそれまで。
技術に関して
アバターについて語るとしたらやはりこの点についてでしょう。この作品の監督であるジェームズ・キャメロンは言わずと知れた名監督で、「ターミネーター」「ターミネーター2」「タイタニック」などの未来を感じさせたり、スケールの大きい作品を手がけてきました。それらの作品では常に最新鋭の映像技術を駆使していて、かつ商業的に成功をおさめていました。
この「アバター」も例に漏れず、商業的に成功をおさめることは間違いないでしょう。(すでにおさめているようですが)
3D映画
いままで3D映画と言ったら、東京ディズニーランドにあるミクロアドベンチャー*1ぐらいしか体験したことがありませんでした。今回、自分は川崎LAZONAにある109シネマズのIMAX 3Dシアターで鑑賞してきました。
まず本編が始まる前の宣伝ですでに驚いてしまいました。「アリス・イン・ワンダーランド」のチェシャ猫の映像がスクリーンから客席に向かって飛び出してきたんです!しかも信じられないほどに鮮明に。本編に期待せずにはいられません。
3D映画の放映手法はいくつかあるようですが、アバター本編を通してIMAX 3Dを初体験した感想は
といった感じです。
特に3番目の映像における「奥行」ですが、これは体験した人にしか分からないもので、これこそが3D映画が従来の2D映画との間に越えられない壁を築いてしまった決定的な技術であると確信しました。この感覚を味わってしまい、「映画館で映画を観る」ことに対する価値観が一変してしまいました。
「3D映画」と「映画」の間にはもはや超えられない壁があって、これからは同じ映画館で上映されるにしても異なった娯楽として楽しむことになると思います。
3DCGキャラクターへの振り付け
またアバターにおいて驚いたのは3DCGであるナヴィ族の振り付けです。自分は大学・大学院で受光式3Dモーションキャプチャーシステムを使って、人体の運動のモーションキャプチャーを行っていたのですが、実際に計測したデータを人体とパーツのサイズ比が異なるモデルに適用させるのは一筋縄ではいかない技術です。
アバターの制作には4年かかったようですが、その中で多くの時間が3DCGの振付けに費やされたのではないかと想像しています。よくサイズが異なる3DCGと人間とのからみでは「お互いの視線のズレ」「接触時の違和感」などを感じることがありますが、アバターではそれはほとんどありませんでした。あまりに自然すぎて事前に id:a2c に聞いておかなければ意識できなかったぐらいです。
今後の作品への期待
非常に技術的に優れた作品であったことは間違いないのですが、それでも改善の余地がないほどであったかと言えば、まだまだ素晴らしくできる可能性は十二分にありました。しかし本格的3D映画の先駆けとしてこの「アバター」は「3D映画として楽しめるクオリティを存分に持ち、かつこれからの3D映画への期待をもたせる」という点で大成功であったと言えると思います。
フルハイビジョンの大画面テレビにもはや驚かなくなり、家庭用映画鑑賞施設が映画館に近づいて来ている今、もう一度「映画館に行くこと」を楽しみにさせてくれたこの「アバター」という作品と今後の3D映画にただならぬ期待を寄せています。
おわりに
この作品を観るにあったって事前に id:a2c がネタバレにならないように多くの楽しむポイントを共有してくれていたので、おそらくなにも準備なしで見に行った人よりも楽しめたのではないかと思います。そのこともあり内容云々よりも技術に対しての感想が多くなってしまいました。
したがってこの感想は他の方々とは全く異なることもあると思いますし、他の方の感想を否定するものでもありません。あしからず。
*1:今年やはりジェームズ・キャメロン監督で「ミクロの決死圏」を3D映画として公開するようですね
*2:観た時から気になっていたのですが、調べてみるとおそらく「円偏光映写」という技術のようです
*3:バスに後ろ向きに乗って本を読んでも酔わない自分でも慣れるまでフワフワした感覚だった