はじめに
こんにちは、Stackdriver担当者です。この記事はpyspa Advent Calendar 2018 の24日目の記事です。メリークリスマス。昨日はインターネットワイドショーこと @tokoroten が担当でした。

異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養
- 作者: エリン・メイヤー,田岡恵,樋口武志
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2015/08/22
- メディア: 単行本
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現職と前職について
自分は前職は米国本社のソフトウェアパッケージベンダーの日本支社に勤務していて、現職は米国本社のソフトウェア企業の日本支社*1に務めています。2社ともカリフォルニア州のシリコンバレーに本社を構える巨大な企業で、両社ともに世界中に支社を構えています。
前職では本社の製品開発チームに対して製品の検証結果を元にバグや機能要望などをフィードバックしたり、複数のパッケージ製品を用いたソリューション開発などを行っていました。
現職では、担当の製品や技術領域に関わるもの、特に最新技術を広くコミュニティや先進的取り組みを行っている企業に紹介し、技術支援をするというような仕事をしています。
2社を通じてほぼ常に*2開発チームが海外の別のオフィスにいて、特に現職では開発チームをはじめとする多くの海外のメンバーと日々やり取りをしながら仕事をしています。そうした中で、自分なりに会社で得たノウハウなどは得たけれど、意外にリモートワークをする上で気をつけていることやツールの使い方をこれまでまとめたことがなかったなと思ったので、この自由なアドベントカレンダーを機にまとめてみようと思います。
コミュニケーション手段やツールについて
現職において利用されるコミュニケーションツールは主に次のとおりです。
- 対面での議論
- 会議
- 雑談
- ビデオ会議(Hangout Meet)
- チャット(Hangout Chat)
- チャットルーム
- ダイレクトメッセージ
- メーリングリスト
- メール
- ドキュメント(Google Docs、Google Slides、etc...)
- Wiki
- 電話
- イシュートラッカー
- バグ報告
- 障害報告
- コードレビューツール
人間のコミュニケーションにおいて、リアルタイムコミュニケーションが可能なときはそれが一番速いため、可能な限りをそれを利用したくなります。例えば、現職でよくあるのが「オフサイト」と呼ばれるイベントです。各地のオフィスにバラけているメンバーを一箇所に集めて、1日〜数日かけて集中的に普段出来ない議論を膝を突き合わせて行います。こうしたイベントが行われるのも、実際に会って相手の表情や身体的な表現を確認しながら話すということの重要性が認識されているからでしょう。
しかしながら、オフサイトはコストがかかるため、気軽にはできません。拠点が複数に分かれている場合、通常は補助的にツールを使うことになります。各ツールには一長一短があるので、状況に応じて使い分けをする必要があるでしょう。先に挙げたツールを次のような点を考慮しながら使い分けていくことになります。
- メディア : 生、映像・音声、音声のみ、テキスト・画像、テキストのみ
- 同期性 : その手段が同期的な(リアルタイム)コミュニケーションを求めるか
- トピック独立性 : その手段でのコミュニケーションは話題ごとに区分けがされているか
- 情報量 : 時間あたり or 1投稿あたりの情報量
- 並行性 : 同時多発的に並行したコミュニケーションが可能か
- 検索性 : あとからそのコミュニケーションの内容を検索できるか
- 閲覧性 : その手段でのコミュニケーションの記録は第三者が見たときの閲覧性が高いか
- 拡散性 : その手段でのコミュニケーションの記録を第三者に共有しやすいか
- コスト : その手段を行うことの金銭的、時間的なコスト
他にもいろいろあると思いますが、とりあえずこんなところでしょう。
さて、以下は自分の環境において、いかにリモートオフィスの人たちとコミュニケーションするかという話です。ここではツールの選択に関して理由をわかりやすくするために、自分の置かれている状況を簡潔に共有します。
- 世界各地にいる同僚と定常的にコミュニケーションを取らなければならない
- ある担当領域において自分が常にタイムゾーン的に少数派(大多数は他のオフィスにいる)
- 関係者はそこそこ多い
自分が気をつけていること
こうした状況でまず自分がなにに気をつけているかといえば「自分はここにいますよ」というアピールです。気をつけていると言ってもまだまだ足りていないのですが、でも目についたらやっています。たとえばある機能の仕様書や設計書のドキュメントレビューのタイミングでは、特に問題がないと思っても「ここは自分も良いと思った」などとポジティブなフィードバックを記録として残すようにしています。また、ビデオ会議やメーリングリストでも、同じ意見であったとしても「自分も同様に思った」と意見を言う、などです。海外オフィスに孤立していると容易に忘却されがちです。どんな些細なことでも意見をいうことで自分という人間が認識してもらえるようにしています。(単純接触効果)
また対面している人間のタイムゾーンを意識しています。たとえば日本時間を基準にすると、朝7-10時はアメリカ西海岸の人たちが終業に向けて仕事を終らせる時間(PSTで15-18時)なので、急ぎの場合はチャット、ゆったりめの場合はメールなどで朝一番(起きてすぐ)に連絡します。そのあと一通り仕事をしてから、身支度をして会社に行き、しばらくは自分の仕事をしていますが、今度は16-17時くらいにロンドンの人たちが起きて(GMTで7-8時)きます。帰宅したあと、早ければ夜10時過ぎ(ESTで8時過ぎ)くらいからアメリカ東海岸の人に連絡をとり、深夜0時ころになるとアメリカ西海岸の人が起きて(PSTで8時)くるので、寝てる間にやってもらいたいことを連絡する、という具合です。 いつもがいつもこんな様子ではないですが、タイムゾーンはどうやっても解決できないので、運用でカバーするしかありません。逆に拠点間をうまく連携できれば効率よく仕事することも可能です。
あとはなるべくドキュメントやメールをベースにしてコミュニケーションを取るということです。最近ではメールを使っている会社は古く、チャットで仕事をすべき、というような発言を見かけることもありますが、先に挙げたような項目を考えたときに、チャットの閲覧性と検索性と情報量の少なさは時差を前提としたコミュニケーションでは致命的です。特にスレッド機能が弱いチャットシステムを利用する場合、その状況は悪化します。メールは依然としてスレッド形式である程度の分量のメッセージのやりとりをするには向いていると思います。しかしながら、議論をメールのみで行うのも効果的ではないと考えています。議論の経緯でなく、最終結果の確認する場合の閲覧性が低いからです。そこで骨子はGoogle Docsにたたき台を提供して、すり合わせが必要になる議論はそこでのコメントやメールスレッドを補完するという方法をなるべく採るようにしています。
同僚にお願いしていること
自分で気をつけていてもコミュニケーションというのは相手がいて成り立つものなので、相手にもお願いすることがあります。
たとえば、時差を考慮したミーティング時間の設定です。まだ他オフィスと協調して働くことに慣れていない同僚は、気軽に日本時間の夜中の3時とかにミーティングを設定してきます。自分がどうしても参加したいという場合には、まず最初に「そちらの時間帯での何時から何時でないと日本からは参加できない」という話を根気強くします。 もちろん、参加者の中で自分だけが違う時間帯であることが多々あるので気が引けることもありますが、単純に相手が意識していなかっただけのこともあるので、まずは言ってみます。また参加できない場合も議事録や会議の録画を最低でも依頼します。議事録用のドキュメントが用意されていれば事前に質問を書いておくこともできますし、録画が残っていれば会議の雰囲気も把握しやすくなります。事後に反論すれば結論が覆ることもあります。さらに、こちらが寝ている間にミーティングがキャンセルされることもよくあります。仕方ないとは言え、一言「直前のキャンセルでごめんね」といってくれればこちらの気持ちも違ってきます。ミーティングの無断欠席も同様です。
また、チャットでのコミュニケーションを多用しすぎないようにもお願いしています。先に挙げたように、チャットの記録というのは閲覧性が高くないため、事後に会話を追うことのコストが高くなります。会話の中で決まったことを拾うのも面倒です。また時差がある中でチャットを多用されると、よほど意思が強くなければFOMO (Fear of missing out)になることもあります。
最後で一番重要に思っているのがオフラインでの意思決定の記録です。こちらが手足を出せないのが別オフィスで行われるオフラインでの決議なので、これの記録が残されないと自分の仕事に対するモチベーションは著しく削られます。自分が関係ない部分であればまだしも、自分が関係ある部分に関しては面倒でもメールかドキュメントとして連絡してほしい旨は必ず念押しています。
最後に
いろいろ書いていましたが、こうした働き方ができるようになると自分の働き方の可能性が広がってくるのも実感できます。自分の職種が特殊なこともありますが、同僚がほとんど海外ということは日本にいる限りはネットにつながっている限り特に場所を選ばないということです。例えばキャンプ場で仕事することも可能でしょう。(実際に海の家で仕事をしたこともあります。)
リモートワークそのものは、会社としてはコストがかかる働き方だと思いますが、それでも成り立つ組織を実現できれば、より柔軟な生活が得られるようになると思いますし、それこそがITだと思います。もっと多くの人がリモートワークの知見を共有して、それが当たり前になる日が早く来ることを願っています。
明日は @hagino3000 です。