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ジャイトニオ猪場のはからいで、全財産を失いました。トランスマスターケンちゃんこと、剣持です。

「Go言語による並行処理」という本が出版されました #cingo

はじめに

こんにちは、Stackdriver担当者です。このたび私の印刷書籍としては2冊めの翻訳本「Go言語による並行処理」がオライリー・ジャパン社より出版されました。本日より書店ならびに各社オンラインストアでご購入いただけます。

Go言語による並行処理

Go言語による並行処理

電子書籍版についてはオライリー・ジャパンのサイトよりePub、mobi、PDFの各種フォーマットにてご購入いただけます。 www.oreilly.co.jp

誤字脱字等を見つけた場合にはこちらのレポジトリまでご報告ください。 github.com

「Go言語による並行処理」はどのような本か

本書はKatherine Cox-Budayが2017年に執筆した "Concurrency in Go" の日本語訳書籍です。

Concurrency in Go: Tools and Techniques for Developers

Concurrency in Go: Tools and Techniques for Developers

この本はこれまで多くの場所で議論されたり語られたりされてはいたものの、書籍のようなまとまったボリュームで記述されることが少なかったGoでの並行処理についてのあれこれを1冊にまとめた本です。 Goの特徴といえば、並行処理を前提とした言語仕様および標準ライブラリでのサポートが挙げられますが、本書ではそれらの前提にある理論の説明と、実際にそれらを使った並行処理のパターンを記述方法についての説明、さらにはランタイムの内部動作に至るまでを触れています。

ともすると並行処理に関する理論などはそれだけでも非常に多くの説明を要し、このサイズの本には収まりきらない内容になってしまうところですが、本書では説明に必要な最低限の部分だけをうまく切り出し、それらを抑えた上でGoでの実装に多くの分量を費やしています。最低限とはいいつつも、必要な内容に関してはうまく導入しているので、理論的な内容を知りたい方も本文や脚注で触れられている参考文献を参照することで、より深い内容を理解するきっかけにもなることと思います。

また本書ではGoでの並行処理で陥りやすい失敗はなにか、紹介するテクニックがなぜ必要になるのか、といった内容も失敗例も含めて記述されているので、実際にコードを書いてはまったことがある人にはより実感を持ってご理解いただけるのではないでしょうか。

すでに @mattn_jp さんや @lestrrat さんより書評をいただいていますので、そちらもあわせてご覧いただけると、どのような本かよりイメージしやすいかと思います。

mattn.kaoriya.net

medium.com

出版に至るまでの話

私がGoを知ったのは、2010年2月ごろで、まだGoに go tools がなく、Makefileでビルドし、クロスビルドはできていたものの、対象アーキテクチャごとに 6g8g などの専用コンパイラを使う、まるでPlan 9そのままといった様子でした。

その後私がGoogleに転職し日常的にGoに触れるようになり、Goを本格的に使いだしたのはGo 1.0がリリースされる前後でした。その後もGoは今日に至るまで発展を続け、Makefileアーキテクチャごとのコンパイラをいちいち叩きながら使っていたビルド環境も徐々に go tools として一つにまとめ上げられ、またかつては数少なかったサードパーティーパッケージも、いまや実用に耐えうるものが潤沢になりました。そしてGoを本番環境システムの開発用言語として採用する企業もいまや当たり前となりました。はじめてのGoConであるGoCon 2013 spring を開催したときには、まだ採用している企業が日本ではほとんどなかったことを考えると、言語自身だけでなくコミュニティもものすごい勢いで拡大してきたことがおわかりでしょう。

そんなGoですが、オープンソースとしてリリースされた当初から変わらず、それでいてもっともGoをGoたらしめているもの、それが goroutinechannelselect といった並行処理に関するプリミティブです。 Goがこれほどまでに急速な発展を遂げたのも、Goの並行処理のプリミティブが非常に強力であったことと、マルチコアCPU時代かつ分散処理が当たり前になりつつあった時代の要請とが見事に噛み合ったことが大きな要因の一つでしょう。*1

そうしたプリミティブは使い始めるには非常に簡単ではあったのですが、どんな道具でもそうであるように「使いこなす」ためには経験が必要となります。他言語での経験があった開発者も、スレッドプールなどを用いた並行処理のパターンをゴルーチンに当てはめて使うことは容易だったとは思いますが、それでもGo独特の並行処理の記述方法やパターンなどは標準パッケージ内での記述や、 golang-nuts のような開発者メーリングリストでシェアされたことで広まったものも少なくありません。

私自身もそうしたところから学んでいった一方で、2年ほど前に、こうした一箇所にまとまっていない情報が整理された書籍があればいいなと考えていたところでした。そんな折に原著である Concurrency in Go の出版の話を知り、以前よりお世話になっていたオライリー・ジャパンの瀧澤さんにその翻訳ができないか聞いてみました。最初のお返事では訳者と編集のご担当の方がすでにいらっしゃるということでしたので、私もそれを楽しみにしていたのですが、その後紆余曲折あり6年ぶりにオライリージャパンでの翻訳を瀧澤さんとご一緒させてもらえることとなりました。

かねてより瀧澤さんのお仕事は間近に見ていたので、今回も翻訳開始前から非常に頼もしく、実際編集に関しても非常にやりやすい環境を提供していただけました。初校、レビュアーによるレビュー、二校、三校と各段階で間に原稿が進まない時期もあったのですが、瀧澤さんにスケジュールをご調整いただき無事に年内に発刊に至りました。

謝辞

訳者序文でも謝辞として執筆させていただきましたが、本書では多くの方々よりレビューをいただきました。 あらためて本書の出版にあたり、忙しい業務や私生活の合間を縫ってレビューに参加してくださった皆様に感謝いたします。

レビュアーの皆様(五十音順)

  • 伊藤友気さん (@mururururu)
  • 上田拓也さん (@tenntenn)
  • 上西康太さん (@kuenishi)
  • 小泉守義さん (@moriyoshit)
  • 渋川よしきさん (@shibu_jp)
  • 知久翼さん (@_achiku)
  • 中島大一さん (@deeeet)
  • 松木雅幸さん (@Songmu)

オライリー・ジャパン

  • 瀧澤昭広さん (@turky)

特に、上西さん、知久さんには英語の細かなニュアンスの差異などを指摘していただき、大いに参考になりました。また小泉さん、渋川さんには訳注として追加すべき情報や技術的な考慮点などを共有いただいたことで、本書の内容がより充実したものとなりました。@mattn_jp さんには書評をいただいただけでなく、本書の告知にも多分にご協力いただきました。あらためて、ありがとうございました。

参照

*1:他にも多くの開発者が慣れている手続き型指向の言語であったこと、実行速度が速いこと、標準のツールが充実していること、シングルバイナリにビルドされること、メモリフットプリントが小さいこと、ランタイムの起動が速いこと、ビルドが継続開発に耐えうる時間で完了すること、など理由は様々だと思います。