はじめに
こんにちは、Google Cloud Operations担当者です。最近はGoogle Cloud Profilerのワークショップを行っているので、アプリケーションのパフォーマンス改善に課題を感じている企業の方、Goのpprofをより積極的に使っていきたいという方はぜひお気軽にTwitterなどでご連絡ください。
さて、図書館に行ったらたまたま新刊で次の本が置いてあったので、軽く読めそうということで読んでみました。
- 発売日: 2020/06/16
- メディア: Kindle版
政治・経済の「物理装置」としての地政学
実は地政学を地政学としてきちんと情報を得たことはなく、高校までに習った地理の知識やその後の国際ニュースの情報などから、だいたいの雰囲気で断片的に知っていたという状態でした。いままで現代史を捉えるときに、その歴史的背景や周辺地域の資源ぐらいしか気にしていなかったのですが、それだけでは理解しづらい部分というのがありました。しかし、あらためて本書で触りだけでも地政学の概要を知ると、各国の地政学における特徴を理解するとともにその戦略的な観点が見えやすくなり、実際にいま現在起きているナゴルノ・カラバフ紛争やシリア内戦などへの理解がより深まりました。
本書の冒頭にも記載がありますが、現代起きている様々な事象をドラマの最新話と捉えるのであれば、地政学や地理はその舞台、そして歴史が過去回ということになります。自分は中高のときに地理が好きだったのですが、それは特定の視点からの地理でしかなく、たとえばこの国は農産が盛んであの国は鉄鋼業が盛んだとかいったものや、この国は輸出国だとか、あくまで産業や気候の状態を「覚える」だけのもので、政治的な戦略と結びつかない形での理解でした。しかしながら長年経ってから地政学と結びつくとさまざまな理解が深まり、なんでこれをいままで知らなかったのだろうと思うくらいです。
本書の構成
本書は構成として「日本」「大国」「大国に影響受ける小国の集まり」という3つの観点から構成されています。
第1章で地政学の基本となる概念を先に説明してくれるので、その後の章で各国がどういう特徴があるかを説明されてもわかりやすく、まずこの章を読むだけでも地理的な知識を多く持っている人はすでに大枠は捉えられたと言っても過言ではないと思います。
第2章はまさに自分の身の回りで起きている様々な出来事、たとえば北方領土、尖閣諸島、対馬列島などの問題における地政学の観点からの解説や嘉手納と横須賀にある米軍基地の地政学上の意味など、その文脈が深く理解できるものでした。
第3章は国際政治を大きく動かす大国であるアメリカ、ロシア、中国に関する地政学的観点からの特徴や、そこから見えてくる各種戦略の解説は多くの現代史の理解を深めてくれるものでした。
第4章はアメリカ、中国、ロシアと友好関係を築いたり、敵対関係にあるアジア、中東、ヨーロッパ諸国の地政学の観点からの立ち振舞を解説。さすがにここは単純に地政学だけでの理解は難しく、補助的に解説を補強するための歴史や文化の解説が入りますが、地政学を軸に他の観点の知識を補強することで、以前よりも整理した形で現状を把握できるようになった感触があります。
感想
本書は2020年6月に発刊されたとあって、最新時事も時折入っており、今軽く地政学について学ぶには非常に良い本だと思いました。実際、発売3ヶ月で10万部発行するなど売れ行きも好調のようです。
本書をきっかけにしてより詳細に地政学を学んでいきたいと思えたので、自分と同じく過去にまったく学んだことがない人にはおすすめできる本だと思いました。あえて本書で残念だったところを挙げるとすれば、本書はどうしても北半球だけの内容になっていたところです。今後多くの天然資源があるアフリカ、オーストラリア、南アメリカに関する地政学的な解説も読みたいなと思いました。
参照
本書の監修の奥山さんのブログ。こちらも面白いです。
外務省のサイトに多くの解説記事があるので、気になった国際政治関連ニュースはたまにここで見てます。