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海水パンツとゴーグルで、巨万の富を築きました。カリブの怪物、フリーアルバイター瞳です。

日本学生支援機構の奨学金を完済した

はじめに

こんにちは、Google CloudでオブザーバビリティSREの関連技術の普及と製品の改善を担当しているものです。このエントリーはPySpaアドベントカレンダー 2022の1日目の記事です。

2008年4月に大学院(修士)を修了して就職し、その半年後の10月から数えて丸14年かけて高校、大学、大学院と借りていた日本学生支援機構の奨学金を2022年9月の支払いで完済し、無事全奨学金の完済証明書が揃いました。本記事はせっかく完済したので自分の記録として残すために書きました。これは知人の本間さん(@CkReal)がちょうど同じようなタイミングで完済されていたので、刺激されたものです。

blog.ckreal.net

奨学金を借りるに至った経緯

単純に家計が厳しかったからです。自分の家庭は父親が小売業の従業員(正社員)で母親が農業(準社員)で仕事をしていたものの、給与は決して良いほうではありませんでした。ただ子供の教育にはお金をかけてくれる家庭ではあったので中高は私立に行かせてくれていました。(「大学は国立大学でないと無理」と言われていて、それなりにプレッシャーを感じてはいました。)弟がいたこともあり、高校から奨学金を借り、そこから大学、大学院と日本育英会(現「日本学生支援機構」)から貸与型奨学金を借りることとなりました。また大学時代には地元の信金が行っていた給付型奨学金を月に1万円余いただいていました。

高校三年時に父親の勤務先が債務超過に陥って、事業縮小のためにリストラにあったこともあり、大学時代は奨学金とアルバイトで生活費を賄っていました。*1東京は家賃も高かったので、大学から離れた安い賃貸に住んでいました。*2

在学中の心境

アルバイトで生活費を賄って切り詰めた上で、余剰のお金でそれなりに大学生活自体は楽しんでいました。しかし、東京圏出身の友人が実家暮らしで家賃も必要ないためアルバイトで稼いだお金を全部交遊費に使ったりとしているのを見て、羨ましく思ったことが無いと言えば嘘になります。いつも頭のどこかでお金に関する不安を抱えたまま在学しているというのはあまり精神的には良いものではありませんでした。

大学院に入ってから、より効率良くお金を稼ぎたいと思い、知人のツテでプログラミングのアルバイトを始めて、だいぶ余裕がでました。たまたま運良く多少のコードが書けたことで生活が多少なりとも良くなったのは、今の職業の原体験だったなと思います。

奨学金を借りているという事実は大学院修了後に就職先を決める際にも影響しました。すでに崩壊しつつはありましたが、まだ根強く残っていた日系企業の終身雇用型の給与体系では奨学金の返済がままならないと感じ、自分のスキルを活かせそうな外資系のIT企業を中心に就職活動を進めていました。*3

奨学金の返済中の心境

就職してから、毎月奨学金の支払いが手取りの一定以上の割合を占めているというのは本当に精神衛生上良くなく、就職後5年くらいはちょっと大きな買い物をしたときに「奨学金の支払いが無かったら贅沢できたな」とか思ったりしてました。困窮はしていませんでしたが、何かを購入する際には支払った金額に対する機能が見合うものなのか、いわゆる「コストパフォーマンス」を重要視するような買い物を常に心がけていたことをよく覚えています。これは今でも染み付いています。

ある程度以上の収入になってからは余裕が出てきたので、各支払いの際に奨学金のことを思い出すことはありませんでしたが、それでもなお、毎月メインバンクのネット銀行から、引き落とし用のメガバンクの口座に定期振込が実行されるたびに「この支払いで本が買えたな」とか考えることはしょっちゅうでした。

奨学金を完済しての心境

特に生活に大きな変化はありませんが、それでもこれからは年間で数十万円の返済がなくなって、年に1回はちょっとした良い旅行に行けるかと思うと、ささやかな喜びを感じます。

奨学金を貸与してもらえなければ、大学にも行けていなかったし、自分がプログラミングのアルバイトをすることもなかったし、きっと外資系IT企業に勤めることもなかったので、今のこの状況にはなってなかったと考えると、感謝しています。しかしながら、贅沢を言うならば、自分も給付型の奨学金が得られていたら、もう少し精神的にすり減ること無く過ごせた時間はあっただろうなと感じています。ルサンチマンとまでは言わないけれど、あの鬱屈した心境はこれから先の生活ではしていきたくないと感じています。

www.jiji.com

給付型奨学金の拡充を行う政策が発表されました。試験一発でキャリアをつかめるチャンスがあるというのは公平性の観点でとても素晴らしいことだと考えています。そして奨学金は家庭の経済状況の差によるハンデを埋めるための素晴らしい制度だと思います。より多くの人にチャンスが行き渡る制度がこれからも維持されることを願っています。

明日は @hiroakis_ の「マンション・リノベ・郊外」に関する話の予定です。

*1:大学の授業料は大学1年後期から半期ごとに免除の申請をして全額免除や半額免除にしてもらっていたので、なんとかなっていました。

*2:今見てみたらまだその物件が残っていて、専有面積10平米とかで驚きました。

*3:当時はGoogle日本法人のエンジニア採用が始まったばかりで、一応応募したけれどレベルが高すぎて通らなかったことを思い出しました。