はじめに
こんにちは、Google CloudでオブザーバビリティとSREの担当をしているものです。去る2023年9月29日、SRE NEXT 2023というSRE関するカンファレンスにて、僭越ながらクロージングキーノートスピーカーを拝命しましたため、その責務をまっとうして参りました。
「信頼性目標とシステムアーキテクチャー」
発表スライドと当日の録画へのリンクはこちらです。
クロージングキーノートという貴重な機会をいただいたわけですが、自分の立場として参加者の方々に何を一番伝えたいか、何が求められているのかなど、依頼を頂いてから悩ましい時間が多くありました。SREというのはたくさんのプラクティスのまとまりですが、やはり自分が伝えたいことがあるとすればSLOに関わることだなと思い、セッションタイトルだけ思いついたので、細かな内容がまだなにも思いついていない状態で運営の方にお伝えしました。
詳細はセッションスライドと録画を見ていただくとして、この発表で伝えたかったことは
- サービスレベル目標を決めると、自ずとシステムのアーキテクチャーや開発のプラットフォームに影響が及ぼされるということ
- 信頼性目標にたどり着くためのアーキテクチャーは対話によって妥当な点を見出すしか無いこと
発表の中では確率を例にして検討を重ねていますが、こういった検討そのものが開発や運用のチーム全体で共通に認識されるべきもので、検討の末に必要になったもの費用も論理的に導かれることが伝われば幸いです。プラットフォームエンジニアリングという言葉もありますが、発表の中でも述べているように、ある程度以上の信頼性はプラットフォームがなければ達成できませんし、Four Keysも本来であればSLOを達成すべきプロセスの文脈で出てくるはずのものです。
このセッションをきっかけに、一人でも多くの方にSLOの有用性が伝われば幸いです。
こちらの書籍にも本セッションで話した内容が触れられていますので、ぜひご一読ください。
r9y.dev 盛り上げていきましょう!
自分のセッションの中で紹介した r9y.dev は「SREエンタープライズロードマップ」を著したSteve McGheeやJames Brookbankが始めたプロジェクトで、各信頼性目標に応じて必要になるテクノロジーを議論しながら作っているものですが、皆さんからのフィードバックやレポジトリへのプルリクエストを元に発展しているものです。ぜひdiscordに参加してコメントをいただけると嬉しいです。
またオンラインで公開ディスカッションを行っているのですが、日本からの参加者が多くあると事前に分かればAPAC時間での開催もできると思うので、是非discordやGitHubのレポジトリで提案してください!
SRE NEXT 2023の熱気がすごかった
SRE NEXTへは初回の2020年の回から3回連続で登壇の機会をいただき、個人的には思い入れのあるカンファレンスの1つです。
特に日本でSREに関するトピックだけを扱った(SREをカンファレンス名に冠した)数百人規模のカンファレンスというのはSRE NEXTしかなく、その点で個人的にとても応援しているカンファレンスでした。そして今年はオンサイトイベントとして復活した回だったわけですが、セッションの内容が「SREのプラクティスを実践してきての学びや振り返り」に関するものが多く、明らかにコミュニティのSREに対する理解や実践度合いが進んできていると思いました。また会場の雰囲気も活気があり、これからが本当に楽しみなカンファレンスだなあと感じました。
自分はSREcon APACの2022と2023でProgramme Committeeに参加したのですが、SREcon APACのセッション内容と比較しても、SRE NEXTは実践的な内容が多く、日本のSREコミュニティの質の高さが伺えました。SREconの場合はグローバルサービスの運用に関する発表が多いですが、SRE NEXTは日本ローカルならではの小中規模の組織での実践の話が聞けるのが貴重だなと感じます。
個人的に好きだったもの
セッションに参加したりブースを回ったりして面白かったものを、Xに投稿されていた写真をお借りして振り返ろうと思います。
途中率が高い書籍が可視化されてるのおもろい #srenext pic.twitter.com/qImCvF5o00
— EG (@EGMC) 2023年9月29日
私が翻訳や監訳に関わった3冊(「SLO サービスレベル目標」「オブザーバビリティ・エンジニアリング」「SREの探求」)の途中率が高いので、読了率を上げる企画をなにかしたい!(アイデア募集中)
続いて基調講演 #srenext_a#srenext pic.twitter.com/My1vbaZj4D
— 西から来た馬づらの男 (@beppu01) 2023年9月29日
セッションの合間に流れるこの映像とかセッション開始時のティザー動画とか、めちゃくちゃかっこよく作られてて、ただ感心していました。
一生コーヒーとどらやきとクッキーとチョコをデプロイし続けるマンしてる#srenext #ワキヤコーヒー #nifty #bitkey #DMM pic.twitter.com/e1d4Lf7huL
— おかしん | 岡村慎太郎 (@okash1n) 2023年9月29日
わざわざ広島からいらして運営にも参加してくださっていた @okash1n さんの「ワキヤコーヒー」さんのコーヒーは美味しかった!
#srenext でオライリーさんブースで書籍買って2024年カレンダーもらえちゃう!#newrelic pic.twitter.com/DpRIJURukV
— Tsuyoshi Shimizu @New Relic (@photographed) 2023年9月29日
オライリー・ジャパンさんのブースはありがたいことに私の翻訳、監訳に関わった書籍(上記の3冊に加えて「Go言語による並行処理」も)を販売してくださっていました。こういうところで自分の本を紹介できるのは嬉しい!
トレーシングとプロファイルの雑談ができたので嬉しかった🤩 #srenext pic.twitter.com/RUKWVXdLFx
— 逆井(SAKASAI) (@k6s4i53rx) 2023年9月29日
ホールウェイトラックも大いに盛り上がって、新しいイベントの企画とかその場で決まっちゃう感じがコミュニティの勢いを感じました!写真に写っている逆井さんにも登壇してもらうOpenTelemetryのイベントが今月半ばにあります!
Topotalブースでwaroomのデモを @nari_ex さんに見せてもらった! #srenext pic.twitter.com/h1EM0AEBu8
— Yoshi Yamaguchi (@ymotongpoo) 2023年9月29日
Topotalのインシデント管理ツールのWaroomのデモを見せてもらいました。オープンベータが出たときに触らせてもらったときから、すごく進化していてこれからどうなっていくのか楽しみです!
おわりに
また来年も開催されることを願っています。今年の後半は自分はだいぶSLOを中心にメタな登壇が多かったので、来年は少し技術を深ぼった内容の登壇にまた戻していきたいという気持ちになったカンファレンスでした。運営の皆様、お疲れ様でした!