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海水パンツとゴーグルで、巨万の富を築きました。カリブの怪物、フリーアルバイター瞳です。

自作キーボードパーツショップを始めた話

はじめに

本記事はキーボード #2 Advent Calendar20日目の記事です。昨日は@e3w2qさんの「狭ピッチキーボードの世界にようこそ」でした。圧倒的な参照文献数の記事で読み応えがありました。

先日は別のアドベントカレンダーで自作キーボードにはまっている話を書きました。

ymotongpoo.hatenablog.com

本記事ではそれをこじらせて自作キーボードパーツショップを始めた話を書きます。

TL;DR

組み立やすいキーボード、コンパクトなキーボード、自分でキーボードを自作するときに必要な部品が手に入りやすい状況にしたいと思い、パーツショップを開くことにしました。

kochikeyboard.stores.jp

まだまだ不慣れなことも多いですが、よろしくお願いします。

2020年3月以前

コロナ禍以前は勤務先の会社の職務内容的に海外の技術系カンファレンスへの登壇やそこで行われる会議やイベントなどへの参加が月に一度か二度あり、それぞれが1週間前後あったため下手すると月の半分以上が海外ということもあるくらい移動を行っていました。かねてよりエルゴノミクスキーボードへの感心は高く、2013年ころからMicrosoftのエルゴノミクスキーボードを、2015年ころからKinesis Advantage 2を、2016年からErgoDox EZを使用していたのですが、月に半分ほどしかその恩恵にあずかれず、あとの半分は出張先でノートPCに備え付けのキーボードを使って仕事をするという状況でした。

そんな状態でしたので「職場と同様の分離型のキーボード」で「持ち運びがでしやすいコンパクトさ」のキーボードがほしいと長らく思っていたのでした。ErgoDox EZ購入後からときおり思い出しては実現に向けてインターネットを調べていると、2017年後半に自作キーボードというムーブメントを知り、Let's Splitを作っている方々を多く見かけ自分もPCBを購入に至り、さらにはHelixのGBにも参加したのでした。

「これでようやく一つ全身できる」と思っていたのですが、当時は無鉛ハンダを使用して組み立てていたり、適当にやりすぎていたこともあって、ハンダ付けに失敗。さらにLet's Splitの設計の都合もありProMicroを取らないと復旧が不可能という状況になったこともあって組み立てに挫折し、HelixのGBの材料もろともお蔵入りさせてしまいました。

2020年7月〜9月前半

本格的にコロナ禍へと突入し、予定されていた出張もすべてキャンセル、強制的な在宅勤務へと自分の働き方が大きく変化しました。また3-5月は諸々となんとか生活をしていくのに精一杯でなにも他のことを考える余裕がありませんでした。6月になりようやくとりあえずで延期されていたものもすべて白紙となり、生活の方も落ち着き、それと同時にいままで合間の時間にしか使っていなかった自宅のデスク環境も見直すこととなりました。いまこそようやく自作キーボードに取り組む時間ができたと感じ、一念発起して自作キーボードをはじめました。今思えばその初手がCaravelle BLEだったのはなかなかにチャレンジングだったと思います。しかしPCBA済みの基盤だったこと、キースイッチのハンダ付けがPCB直だったことはかなり実装の負担が少なく、また完全無線分離型40%キーボードという、絶対に既成品では得られないものが得られた楽しい体験によって、その後自作キーボードにはまることになったのだと思います。SatTさんには本当に感謝しています。(ケースがあったりフォームがあったりするキーボードを組み立たのもこのときが初めてで、打鍵感など非常に参考になりました。)

その後、多くの方々が設計したキーボードを組み立ていきました。念頭にあったのは前々から考えていた「分離型でコンパクトなキーボード」で、30%-40%を中心にいろいろと調査をしていました。また出張などで荷物の紛失の危険性などもあるので「すぐに組み立られるか」というのも大きなポイントでした。国内で販売しているものや、海外で発表されているものも含めて検討した結果、やはり自分で作るしか無いと思い要点を整理し始めたのが9月の後半でした。

それと同時に自作の薄型キーボードで使われているKailh Choc v1/v2シリーズへ対応しているキーボードの少なさや、Outemu LPの入手のしづらさ(いまは遊舎工房さんで取り扱いがあります)を感じることとなりました。また自分でキットがないものを組み立てようとすると多くの部品を自分で見つける必要があることを感じました。自分がそう思っているのであれば、他にもそう思っている人もいるだろうと思い、在宅勤務で自宅にいる時間も増えたことから「どうせ自分でキーボードを設計して作るなら、そういう材料を自分で揃える羽目になるわけだし、じゃあそういうものを取り扱う場所を増やそう」と毒を食らわば皿まで精神でお店を開くことに決めました。

2020年9月中旬〜10月末

お店を開くということは在庫を用意する必要があるので、この1ヶ月半はひたすらいろいろと仕入れを行っていました。このときに初めて他人に海外送金をし、さらに初めて自分に対して「口座を開いてもらう」という行為をしてもらいました。しかも海外の会社に。海外送金には本当に手間取って、ソニー銀行には多くの書類を送ったにもかかわらず審査を落とされたので、それなりに口座にお金を入れているのにその仕打ちはなんだという気持ちだけが湧きました。

その後、なんとかすべて配送待ちという状況になってから、今度は海外から送られてくるのに2週間弱。海外からの仕入れはこの時差が本当に厳しいです。もちろん高い送料を払えば数日で届くわけですが、そうすると送料がものすごく高くなってしまうので、とても個人で仕入れる数量程度はペイしません。卸とか商社の大変さを勉強できる良い機会でした。

ECを行うための発送関係の備品も同時に揃えました。梱包用ダンボール、緩衝材、納品書や宛名ラベル印刷用のプリンターなど、多くのものを準備して、本当に開店できるのか心配になったのもこの頃です。

また是非取り扱わせてもらいたいと思っていたCorneキーボードシリーズの作者の@foostanさんに連絡をしたのもこの時期です。無理な申し出にもかかわらず、快諾をいただけたことは本当に感謝しております。お店に対しても自作キーボード関連の部品を扱う店が増えることを応援している、と温かい言葉を頂いたことはなにより励みになりました。

10月半ばにとりあえず最低限お店を開ける状況になったので、友人のみに限定公開し、お店のフィードバックをいただきました。フィードバックいただいた方々には本当に感謝しています。一通りECサイトの機能と発送処理も理解でき、なんとかこなせたので安心したのを覚えています。

2020年11月1日〜

前々から月初に開店しようと思っていたので、準備が整ったあとの最初の月初である11月1日に開店しました。

ありがたいことに開店日がたまたまほぼ週間キーボードニュースの放送日だったこともあり、びあっこさんからご連絡をいただいて、放送で取り上げていただきました。(19:21ごろ


ほぼ週刊キーボードニュース #84 カスタムキーボード「Vega」の発売日が発表! ほか (11/1) #自作キーボード

おかげさまで開店から1ヶ月半が過ぎまして、一応特定の部品は2回目の仕入れをするなど、お店がぎこちないながらも動き始めた感じがします。しかしまだまだコミュニティに貢献できているという感じではないので、これからできることを増やしていきつつ、引き続きみなさんに応援いただければありがたいなと思います。

おわりに

とくにとりとめもない記事でしたが、こういう経緯でお店をはじめましたという自分の記録になりました。いろいろと至らない点があると思いますが、なにか感じたことなどがあればどうかお気軽に店舗のTwitterアカウントまでDMやメンションをいただけたら幸いです。

twitter.com

これからもよろしくお願いします。

この記事はCorne Chocolate v2.1で書かれました。

明日は@yoichiroさんです。